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2019.04.29 コラム

宝石の鑑定書や鑑別書は最新のものでなければ意味がない?

このサイトではジュエリーをよく取り上げていますが、その中でたびたび述べてきたのが
「鑑定書」と「鑑別書」の重要性。

ちなみに、
「鑑定書」はダイヤモンドについて、
「鑑別書」はルビーやサファイヤなど、色石について証明するものです。

よく、買った時についてきたものを「鑑定書」として出されることがありますが、「保証書」であることが大半。
保証書はあくまでも購入した店が出しているだけなので、査定には不要です。

そんな「鑑定書」「鑑別書」ですが、最新のものであるということが絶対条件!
今日はその理由についてご説明します。

年々、ぐっと厳しくなる
グレードの基準


実は年々、グレーディングの基準が厳しくなってきています。
そして結果的に昔の基準とずれが生じるため、
鑑定書・鑑別書は最新のものである必要があるのです。

下記の表をご覧ください。
これはダイヤモンドの評価を示す「4C」のうち、透明度を示す「クラリティ」の評価基準の表です。

FL
10倍拡大で内部にも外部にも不純物やキズがまったくない
IF
10倍拡大で内部に不純物やキズがまったくない
VVS-1
10倍拡大でも不純物やキズの発見が難しい
VVS-2
VS-1
10倍拡大でも不純物やキズの発見がやや難しい
VS-2
SI-1
10倍拡大で不純物やキズを発見するのは簡単だけど
肉眼では発見するのは難しい
SI-2
I-1
肉眼で簡単に不純物やキズが発見できる
I-2
I-3

例えば昔の鑑定書ではVVS-1や2クラスだったものも、今、改めて査定をしてみると、VSクラスにダウン。
これはよくあることというより、むしろ常識です。

つまり、昔の鑑定書の評価は、今、全く通用しないのです!

また、かつては宝石がよく売れ、宝石店も多く存在しましたが、今は時代とともに減少。
周りを見て「昔ここに宝石店あったよねえ…」なんて思う方も多いかもしれません。

そして、宝石店の減少に比例するように、鑑定機関も減っています。

そうなると、持ってきた鑑定書を書いた機関が、現在存在しないケースもあり、鑑定書そのもの効力がありません。
昔の鑑定書でよく見るのは「全国宝石学研究会」という機関。
以前は広く知られていましたが、今は存在しません。

以上の理由から、鑑定書や鑑別書は、最新のものではないと意味がないのです。

とはいえ、大昔の鑑定書の効果が、全くゼロというわけではありません。
それを基準にする店や鑑定士もいますし、「この鑑定機関は廃業したので効力がない」ということを、はっきりと伝えることができるからです。

さて、「最新」の目安ですが、具体的には5年以内。
10年以内でも悪くはないですが、それを過ぎるとほとんど効果はないでしょう。

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過去にはあった!
宝石商と鑑定機関の癒着

先程、昔は宝石店や宝石鑑定機関が多かったとお伝えしましたが、中でも鑑定機関の数は、最盛期だった20~30年前に比べ、1/5~1/10に減っています。

20~30年前、バブル時代には、宝石は飛ぶように売れました。

結果、起こったのが「宝石商(店)と鑑定機関の癒着」。
簡単に言えば、店がお金を払って、鑑定を甘くしてもらうのです。

下の表は、ダイヤモンドの4Cのうち「カラー」の評価基準の表です。
無色透明のDランクが一番よく、Zに向かうほど黄色や茶色の色味が強くなり、クオリティも低くなります。

D E F G H I J K L M N Z
無色 ほとんど無色 わずかな黄色 黄色~茶色

↑は現在の表ですが、癒着が行われていた頃の基準を極端に表すと、以下のようになります。

D E F G H I J K L M N Z
無色 ほとんど無色 わずかな黄色 黄色~茶色

「ほとんど無色」の範囲が広く、本来なら「わずかな黄色」のダイヤが、この表を基準にすると「ほとんど無色」として評価されることになります。

つまり、本来ならLやMくらいの品質が、なぜかHランクに。
ユーザーも「23あるランクのうち、上から5番目ならすごい!」と喜んでしまうわけです。

これは質屋や買い取り業界では有名な話ですが、とある大手の宝石鑑定機関に、N氏という人物がいました。
役職は所長。
しかしこの人物は所長でありながら、あろうことか宝石商と癒着していたのです!

N氏の名前は、次第に鑑定士の間で知られることに。
やがて、お客様が鑑定書を持ってきても、鑑定者がN氏だった場合、鑑定書としての価値がないと判断されるようになりました。

その後噂は広がり、ついにN氏は業界を追放。
宝石鑑定機関は信頼を取り戻すために、かなりの長い年月を費やしました。

こうした出来事や、世の中が不景気になり宝石が売れなくなったことで、宝石を扱う店や鑑定機関は減少。市場も縮小しました。

しかしそれは同時に「淘汰」を意味します。
今残っている鑑定機関は、技術を磨き、信頼できる業者だけということ。

現存している機関は、日々鑑定に注力しています。
そして、技術があがるとともに、鑑定も厳しくなっていっているのです。

こうした理由も「鑑定書や鑑別書は最新のものでないと意味がない」ことの裏付けになっているといえるでしょう。

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これは知っておきたい!
鑑定機関にもランクがある


さて、昔は多かった鑑定機関は現在淘汰され、信頼できるところばかりが残っています。

とはいえ、現在も鑑定機関にはランクがあり、A~Dまでに分けられています。

鑑定士のお墨付きのA鑑定、通称「Aカン」は以下の機関。

・中央宝石研究所
・GIA
・GRJ

中央宝石研究所のみ、日本の機関ですが、どの機関も歴史と実績があり、全国の鑑定士が信頼を寄せています。

逆に、ショッピングモールなどにある宝石店でも、鑑定書や鑑別書はついてきますが、残念ながらランクはCやDであることが大半。

単価の安いジュエリーを扱っているため、鑑定にお金がかけられないのがその理由。
ですから、鑑定書や鑑別書を取るなら、A鑑定の機関で取りたいところです。

あまり知られていませんが、鑑定書や鑑別書は一般ユーザーでも取ることができます。
しかし、注意点が1点。

それは、鑑定機関に鑑定を依頼する際には「ルースで送る」ということ。

ルースとは簡単に言えば、以下のように石だけの状態です。

引用元:https://www.kyocera-jewelry.com/

もし、売るつもりがないのに、「鑑定書」や「鑑別書」が欲しい場合、鑑定機関ではルースにする(台から石をはずす)ことはできますが、戻すことができません。

そのため、宝石加工店などでまずルースにし(台から石をはずす)、ルースを鑑定機関に送り、戻ってきたら再び加工店を訪れ、指輪など元の状態に戻すという手間がかかります。

売る前提なら、一連の作業を買取店におまかせできますが(有料の場合もあり)、単に鑑定書・鑑別書が欲しいだけの場合は、余分な作業や時間・費用がかかるので、そのままにしておくことをオススメします。

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まとめ

今日は、鑑定書・鑑別書は最新のものでないと意味がないということを述べてきましたが、お伝えしたいのはひとつ。

「鑑定書・鑑別書は古くても5年以内のものを!」

とはいえ、すべての宝石に鑑定書や鑑別書が必要なわけではなく、優良店であれば「お金をかけても鑑定書を取った方が査定アップになりますよ」とアドバイスしてくれるので、ご安心ください。

かつては宝石商と宝石鑑定機関の癒着もあり、グレードもあやふやでしたが、現在は鑑定機関は淘汰され、同時にグレーディングが厳しくなっています。

また、
・現在の鑑定機関においても、A~Dまでのランクがある
・売る予定がないのに、鑑定書・鑑別書を取るにはリスクが伴う
ということも、知っておいて損はありません。

鑑定書・鑑別書の有効な活用法を知り、高価な宝石は「高価なもの」として適正に判断されるよう、売る側も知識を付けていきましょう。